デジタル暗室を導入して、もう半年以上が経過した。今のところ、EOS Kiss Digital Xで撮影、Digital Photo Professional (DPP) でRAW現像、DxO FilmPackで調整、PX-G930で出力というプロセスで行っている。少しずつであるが、これらの使いこなしが分かってきたような気がする。
DxO FilmPack。
銀塩フィルムの色調、コントラスト、粒状感をシミュレーションできるという写真編集ソフト。購入時はVer. 3であったが、現在はVer. 4が最新版になっている。様々な効果がプリセットされており、フィルムについてはモノクロ26種類、カラーポジ26種類、カラーネガ12種類から選択できる (エキスパート版)。この存在を知り、デジタルの可能性を確信し、デジタル暗室構築の踏ん切りがついたともいえるソフトである。豊富なプリセットがあるにもかかわらずカラーネガは「Fuji Superia Reala 100」、モノクロは「Kodak T-Max 100」のほぼ2択で、正直あまり使いこなせてはいないが、このソフトの効果は絶大である。デジタルで生じるノイズは汚い以外の何物でもないので、別の悪影響を及ぼさない限り徹底的に除去すべきであるが、そうすると、のっぺりしたぬり絵のような質感になってしまう。RAW現像できっちりとノイズ処理をしたうえで、このソフトで粒状感を与えると、ベタ塗り部にしてもグラデーションにしても、立体的で活き活きとした仕上がりになる。フィルムの持つ、適度な粒状感というのが銀塩写真の心地よさなのかもしれない。
今の目標は、銀塩プロセスでのプリントを基準として、デジタルプロセス (デジタルカメラ→パソコン→プリンタ) でそれと同じ仕上がりにすることである。しかし、フィルム暗室とデジタル暗室とでは根本的に仕組みが異なるものである。フィルム暗室の場合、コントロールすべきパラメータは基本的に印画紙の号数 (マルチグレード紙の場合はフィルター) と露光条件 (絞りと秒数) である。一方、デジタルでは、撮像素子から出力された12~14ビット (EOS Kiss Digital Xは12ビット) の情報から、ハイライト側・シャドウ側のどこまで使うかを選択し、トーンカーブで定義される入力出力の変換関数を掛けて、0~255 (8ビット画像の場合) の輝度情報に落とし込むという作業になる。RAW現像ソフト上ではスライダーを動かすだけの操作であるが、内部的にはたぶん上述のような仕組みであろう。モノクロ写真については、試行錯誤を繰り返し、2号のストレートプリントと同じトーンはほぼ再現できるようになった。
カラーについてはまだ良く分からない。デジタルで最近感じているのは、自由度が高すぎるということ。スライダーを動かすだけでどのようにも調整できるため、芯を持って取り組まないと、簡単にブレてしまう。モノクロ写真については、長いこと暗室作業を取り組んできたので、号数とトーンの関係などは体に染みついている。その基準に従って、画像調整することができる。一方、カラー写真では、コントラストや色彩の強い写真というのは印象的で、調整しているうちに無意識にそのようになりがちである。自分なりの基準を持つ必要があるが、それは数をこなさないと身に付かないものだと思う。
従来の暗室にも言えることだが、短いスパンで何回も取り組むことが、上達への近道である。1回暗室作業をすれば、少なくとも1つは、テクニックであったりコツであったりを掴むことができるはずである。ということで、最近はどんなに忙しくても、毎日L版10枚は出力するようにしている。フィルム暗室の場合には、引伸機をセットして、遮光をチェックして、バットを用意して、現像液や定着液を調合して、と準備に時間がかかる。これに比べ、デジタル暗室は楽すぎる。プリンターの電源を入れるだけ。片付けもプリンターの電源を切るだけ。残業して夜遅くに帰ってきても、それからでも作業することができる。これはデジタル暗室の大きなアドバンテージであり、これを活かさない手はない。
デジタル暗室により作業としては確かに簡単になったが、理想と思う写真に近づけるための努力が不要になるわけではない。様々な方法を試み、仕上がったプリントをみて軌道修正するという、試行錯誤的な進め方は従来の暗室と何ら変わらない。今更ながら、奥の深さを感じている。
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2013/07/26(金) 03:21 |
写真
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